『中央公論Adagio』第17号の配布がスタートしました。かつて中学生のころに『八つ墓村』を読み始めた夜、とうとう眠りにつけなかった記憶があります。いきなり目の前の闇が濃くなって底知れない恐怖に呪縛されてしまうという体験は、みなさまも覚えがあるのではないでしょうか? 横溝正史の世界の深層に迫ってみた本誌が、新たな魅力を発見するきっかけとなりましたら幸いです。わたしは今回取材に訪れた二松学舎大学で横溝の貴重な生原稿を見せてもらい、それが思いがけず端正な、女性のように美しい筆跡で書かれていることにかえって凄味を感じないではいられませんでした・・・・・・。