必ず読みたいと心に決めながらこれまで機会のなかった本、というものがどなたにもおありなのではないでしょうか? わたしにとってそのひとつがソルジェニーツィンの『収容所群島』(全6巻・新潮社)でした。まだソ連が屹立していた学生当時、ベストセラーだったそれに手を伸ばしてはみたものの歯が立たずにページを閉じてから約30年――。いまではページを繰るのももどかしく、そこに刻まれた言葉のひとつひとつから人間の愚劣と崇高の凄まじさがストレートに胸に迫ってくるのは、この間に重ねた人生経験のせいでしょうか? それにしても、ソ連が消滅したとはいえ、20世紀文学の極北ともいうべきこの人類の文化遺産がすでに日本では絶版になって久しい(わたしもこのたびは古書店で入手しました)とは……。