東海大学で行っている秋学期の授業で、受講生たちに「私を変えた1冊の本」というレポートを課しました。それに対して戻ってきた文面の面白さといったら! 学生が付けたタイトルと取り上げた書名のみいくつか並べてみましょう。「犬・猫・虎」(『山月記』)、「変化する景色」(『古都』)、「自分にも陽が当たった!」(『陰日向に咲く』)、「イカロスの入門書」(雑誌『世界の翼』)、「偶然じゃないかも。」(雑誌『アニメージュ』)、「突発ロシア文学入門」(『地下室の手記』)、「私と先生と変な本」(飯田史彦『生きがいの創造』)、「よくぞ日本人に生まれけり」(『美味しんぼ』)、「偏見は踏み出す一歩で変えられる」(『新機動戦記ガンダムW』)……。いかがですか? これを眺めただけでも、平成生まれの世代もまたみずみずしい読書体験と出会っていることが窺われるのではないでしょうか? とかく若者の活字離ればかりが声高にいわれ、一面の事実だとしても、しかし、そんなふうに十把ひとからげに捉えるのではなく、かれらのひとりひとりが実際にどのように本と交流し何を得ているのかについてもっと関心を向けるべきだと思います。少なくとも出版業界に身を置くわれわれとしては。
コメント