まったくマーラー『交響曲第3番』は不思議な曲だと思います。オーケストラだけで演奏される前半の3つの楽章はいやにはしゃいだり、ふざけたりして、続く第4楽章ではいきなりアルトがニーチェ『ツァラトゥストラかく語りき』の詩句を歌いだし、第5楽章では少年と女性の合唱団がにぎやかに童謡をコーラスします。そのあとで、ふたたびオーケストラだけになって、いつ果てるともなく奏でられるアダージョ終楽章の美しさといったら! けだるい午後にこの麻薬のような音楽をかけていると、そのまま白日夢に引きずり込まれそうになります。昨日聴いたのは、最近出たハイティンク指揮シカゴ交響楽団の自主制作CD。ストレスフルな毎日を送っていらっしゃる方におすすめです。
編集長