みなさま、はじめまして。これまで一般の雑誌を作っては売れたり売れなかったりと神経を磨り減らす人生を過ごしてきて、齢48歳にしていきなりフリーマガジンの世界に足を踏み入れるとは想像もしていませんでした。いやあ、実に晴れやかな気分です! 売れ行きを気にしないで大部数の雑誌を作れるのはなんという贅沢でしょう。この解放感を満喫しながら、ひたすら読者のみなさまに面白がっていただけるものをめざして誌面の編集に取り組んでいくつもりです。そのためには試行錯誤も恐れません。どうか温かい眼差しで見守っていただき、また、おりに触れて忌憚のないご意見ご批評を頂戴できますとありがたいです。ご支援をよろしくお願いします。
創刊号の特集テーマに選んだのは、江戸川乱歩。一度は正面から立ち向かってみたいと思いながら、これまでその機会がなかったのは、やはり一般の雑誌が取り上げるには売れ行き上のリスクが大きかったからにほかなりません。石塚公昭氏の素晴らしくも妖しい作品をドーンと表紙に打ち出せたのもフリーマガジンならではでしょう。わたしたちの世代にとって乱歩といえば、その『少年探偵団』シリーズが小学校の学級文庫の必備品だったことが胸に刻み込まれています。おそらくは日本じゅうのすべての教室に怪人二十面相がひそんでいたはずです。文部省なりなにやらの推薦図書などには見向きもせず、時がたつのを忘れて怪人二十面相と明智小五郎の攻防に息を殺していた、わたしもひとりです。そんな幼い日の読書体験に始まり、出版社を仕事の場所として、いま新しいフリーマガジンを送り出すにあたり特集テーマを乱歩としたのは、せめてもの恩返しの気持ちがあったからかもしれません。みなさまにもお楽しみいただけましたら幸いです。
編集長